太陽と月と魔術と占星術と・その1

　宇宙の深淵のどこかに、小さな球体があり、天を駆け、淡い黄色の恒星の周囲をまわっています。くるくるとまわるその姿は、まるでコマのようです。
　あなたと私、そして数十億人の人々が、その表面のどこかで暮らしています。

　私たちの多くは足元の地面に夢中で、頭上の空に思いを巡らせることがほとんどありません。しかし、占星術師として、そして魔術師として成功したいのであれば、この無知を打ち破らなければなりません。
　占星術の原理を理解することは、ほぼすべての魔術的実践において不可欠であり、同様に、自分自身の内面について――内なる動機について――理解することも必要です。

　多くの人は、「占星術」というと太陽や太陽星座を思い浮かべます。しかし、魔術師にとっては月のほうがはるかに重要です。
　太陽が昼の王であるなら、月は夜の女王です。夜こそが伝統的に魔術の時間なのは言うまでもありません。
　夜の女王は、チェスボード上のクイーンのように、ほぼどこへでもいけて、何でもできる力を持っています。ただの「歩兵」で終わりたくない魔術師は、月を観察する術を学び、その動きを「追う」だけではなく「予測する」術も身につける必要があります。
　また、自分自身の中にある月の力を認識し、それを操作する力も必要です。「内なる月」を知ることは、宇宙を魔術的に理解するうえで不可欠だからです。

　占星術のいくつかの部分は、たとえ最初は半信半疑だったとしても、信じて受け入れる必要があるものです。たとえば、冥王星のような小さな惑星が、地球から35億7800万マイルも離れているにもかかわらず、さらには肉眼で見えないにもかかわらず、私たちの日常生活に影響を及ぼすというのは、そう簡単に理解できることではないでしょう。

　それに比べると、太陽と月の力は、占星術への興味のある/なしに関わらず、誰にとってもわかりやすいものです。

　たとえば太陽の影響を実感するのは、太陽が照っているときとそうではないときとで、自分の気分がどれだけ異なるかを比較するだけで十分です。また、農家や園芸愛好家にとって、太陽の影響が極めて重要なのはご存じのとおりです。太陽の光によって作物がぐんぐん育つこともあれば、反対に収穫前に枯れてしまうこともあります。
　そうした太陽の力を比べると、月の力はそれほど明白なものではありません。特に街灯が立ち並び、ネオンサインによって月のない夜の荘厳な闇までも損なわれているような大都市に住んでいる人にとってはなおさらでしょう（ちなみに、満月はおよそ15ワットの天井照明と同じ明るさを放つと言われています！）。
　それでも、船乗りや沿岸警備隊にとって、月はとても大切なものです。海の潮の満ち引きを考えてください……これ以上はもう説明するまでもありませんね！